【第2回対談】三原じゅん子議員×大川豊氏 後編
-第2回対談動画(後編)-
第1回対談に続き、福祉現場で生じている問題をテーマとして、三原じゅん子議員(前厚労副大臣)×大川豊(大川興業)による対談を実施しました。
厚生労働副大臣をご経験された三原議員と、知的障がい者の8050問題、高齢知的障がい者の介護施設での受け入れ問題等の対談を行っています。
※障がいに関する記載について
対談記事の中で、法律用語や制度を示す際は、正確性を期するため「障害者」という用語を使用しています。
境界知能・グレーゾーンの方々の問題
大川豊:財務省の方でも、グレーゾーンや境界知能の方まで含めたら1700万人も日本国内でいると言われていて、(全員を制度の対象にしたら)財政負担が耐えられないんじゃないかとか、皆さんお考えになっていると思うんです。
境界領域知能とは、明らかな知的障害(精神遅滞)とはいえず、環境を選べば、自立して社会生活ができると考えられるが、状況によっては理解と支援が必要な方々を主にいいます。
けれども、施設の現場に行くと、軽度の知的障がいの方が重度の障がいの方の補佐を自然とされているんです。例えば、重度の方の言葉が分からない時があるんですけど、別の軽度の利用者さんが全部通訳をしていたりですね。あれすごいですよね、(私たちでは)全くわからないんです。
三原じゅん子:それを通訳していただいて。
大川豊:スタッフの方もわからない。けれど、軽度の利用者さんが「(重度の利用者さんは)今、お腹が空いていて、何が食べたいって言ってるよ」っていう感じのことをちゃんと伝えてくれたりするんです。
三原じゅん子:大事なことですね。
大川豊:だから、例えば、おにぎりをコンビニで盗んで刑務所を出たり入ったりされている方たちが、実は軽度の知的障がいじゃないかとか、発達障がいをお持ちじゃないかっていうことは、実は言われているんです。
刑務所にも視察に行かせていただいたんですが、中には障がい者等の認定を受けたくないっていう方がいたりとかします。でも、やっぱりちゃんと訓練すると、刑務所内ではきっちりと細かい仕事を皆できているんですよね。
例えば、eスポーツでもいいと思うんです、ゲームが好きな子だったら。本当に軽度の方であったり、境界知能のグレーゾーンの方たちがちゃんとした職業を見つけることができたら、裁判の費用とか防犯の費用とか刑務所の運営費用とか考えたら、ものすごくその国に貢献をしていただけると思うんですよね。
三原じゅん子:(お金が)出ていくことばっかり考えちゃうんですよね、財務省さんね。だから、そうじゃなくて、きちっと決めたことによって、これだけのメリットもあるんだよっていうことを、私たちが言っていかなきゃいけない。
高齢化する知的障がい者の問題
三原じゅん子:動画をご覧になっていただいている皆さんの中には、なかなか実感がわかない方も多いと思うんです。例えば、知的障がいをお持ちの方たちが、ワクチンを打つとか、そういう時にどれだけ大変な思いをされているかとか、スタッフの皆さんがどういう思いをされているかとか、保護者の皆さんのご苦労とか。
そして何よりね、多分驚かれると思うのが年齢だと思う。(知的障がい者のことを)お若い方を想像してらっしゃると思うですけど、決してそうじゃないんです。
ダウン症のある人の約半数は生まれつき心疾患があるため、1970年ごろまでは平均寿命が10歳ぐらいだった。ところが手術で助かるようになり、最近の寿命は60歳くらいとも言われている。長生きにともない、青年期以降の医療の受け皿が少ないことが課題となっている。
2022年3月21日:朝日新聞「ダウン症の人の寿命、50年で50歳伸びる」
大川豊:知的障がいとか発達障がいの皆様の8050問題、9060問題っていうのが、大問題でございまして
三原じゅん子:要は、60歳の知的障がいの方を、90歳、80歳のお母さんに対して、どうしても暴れてしまうけれども、なんとかご家庭で守ってあげてくださいって、無理です。
だから施設のスタッフの皆さんと一緒に支援を行っていこうとしているわけですけれども。高齢の知的障がい者の方を、もっと高齢になったご家族が支援をするということが今色々なところで起きているっていうことなんです。介護であってでもですが。
大川豊:介護の場合ですとちゃんと特養があったり、普通に施設に老人介護のプロの方がいて、色々面倒を見ていただける方に囲まれているわけじゃないですか。
ところが知的障がいの皆さんはなんか地域に戻そう(※地域移行)というのが国の方針であるらしくですね。在宅支援っていうのがあって、これもちょっともう限界で、終の棲家っていうことを考えてあげないと、孤独死をされてしまう方のいらっしゃる状況なんです。
三原じゅん子:保護者の方の高齢化が進んで、もう体力的にも精神的にもちょっと厳しいと思いますよ。
それにね、「地域みんなで」って言いますけど、それ自体はいい言葉だし、それが本当にできれば素晴らしい天国ですよ。ただ、多くの皆さんは、それぞれ今日生きることに大変、一生懸命なわけです。大変な時にね、地域で見るって言われても…(※)
※健常者のご家庭でも老々介護・ヤングケアラーの問題が社会問題化し、各家庭内での生活に困難な問題を抱えているため、「地域移行」や「地域での支え合い」へ対応する余力がないのが現状。
大川豊:そうなんですよ。
もちろん、地域で頑張って受け入れられてる方たちもいらっしゃいます。けれどもそれはある程度資産的に余裕があったり、日頃から地域とのネットワークをお持ちだったりとかしている方が多い。
実は知的障がいのお子さんが生まれた時に離婚されてる方も多いです。それでずっとお子さんをご家庭内で面倒見たりっていう状況が生じる。中には例えば、お子さんが暴れたり何するかわからないっていうことがあるので、仕事辞めざるを得ないんですよ。そうすると周囲でなんて言われるかって言うと、「子どもの障がい者年金で暮らしてるじゃないか」みたいなことまで言われたりするんです。
本当は働きたくても働けないんだと。だから、そういうのをちょっと分かっていただかないと。
三原じゅん子:そうですね。知的障がいの方がどういう行動をされるかとかね、(動画をご覧になっている多くの方は)見当もつかないと思うんですね。だから、一度現場への視察に行きましょう!
知的障がい者施設の現場を知ってほしい
大川豊:障がい者用のグループホームとか各地にあるんですけども、重度の方とか医療的ケアが必要な方を受け入れるというのは、現実的にはちょっと厳しいです。
厚労省の方とかに、知的障がいがある方が施設で65歳を超えた場合にはどうするんですかって言ったら、「普通にちゃんと介護施設の方で受け入れます」って回答されていました。けれども、実際は無理だと思います。
三原じゅん子:介護施設に知的障がいに特化した特別なスタッフさんがいるわけでもない。
大川豊:職員の方も、やっぱり利用者さんから噛みつかれたり、殴られたりとか大変な思いをします。
三原じゅん子:私も何回か現場行ったことあります。その時も施設ではそういうことがあり、みんなで身を呈して止めていました。利用者さん同士で揉め事みたいなことがあり、そこをみんなで身を呈して止めて、揉めている2人を離そうとやってらっしゃいました。
私が「これずっとですか?」って聞いたら、ずっとですとおっしゃってたので…。
私、高齢者の介護施設をやっていたことあるんですが、それとは全然違うなって思いました。(介護施設では)認知症の傾向がある人とかいらっしゃいましたけど、そういうのとは全く違いますから。
私が今まで行ったことがある知的障がいの方の施設っていうのは、どっちかっていうと、お体お元気な男の子とかだったので。今、高齢の知的障がいの方が増えていますが、若い方は若い方でまた大変だし。やはり現場のスタッフの皆さんのことをもう少し理解しないといけないと思っています。
総裁、視察行こう。
大川豊:行きますか、それはありがたいです。
三原じゅん子:話聞いていて思った。その現場行こう。そして、そういうことをもっとみんなに伝えていきましょう!