第2回 知的障がい者の明日を考える会

-知的障がい者の8050問題と今現場で抱える問題の解決へ-

平成30年10月23日、木村義雄参議院議員を発起人代表として第2回勉強会が開催された。同会には、全国の施設関係者、保護者、自民党国会議員、関係省庁の計137名が出席し率直な議論がなされた。議論の中では、木村義雄議員の指摘により厚労省が通知(Q&A)の修正を確約する場面なども見られた。

トピックス

  • 知的障がい者の8050問題の解決に向け、まずは必要最低限のセーフティネットの構築を行うことに。
  • 第1回勉強会を受けて厚労省が出した通知(Q&A)に対し、木村義雄議員が「地方行政に広範な裁量を認めるもので実効性が無い」等と指摘し、その場で厚労省が通知の修正を確約した。
  • 意見交換では、知的障がい者の定義や人口が国際基準と乖離している実態や、相談支援事業等の制度的不備などが指摘され、厚労省側の問題が明らかとなった。
  • 福祉現場における8050問題等の解決に向け、木村義雄議員を会長とする「議員連盟」の設立が決定された。

議事録の抜粋

知的障がい者の8050問題の解決に向けた最低限の基準

足高慶宣(障がい者福祉研究所代表):「支える。救う。セーフティネット。」というものを最低限、知的障がい者にも被せる必要があると考えています。国から過剰なお金を配分してもらおうとは思っていない。それよりも使い方に合理性を導入して、最低限今の段階で出来ることをしなければならない。

親が死んだ後の障がい者をどうするか?野垂れ死にさせるのか?それとも、手厚くなくとも最低限生きていける施策を実施するのか?まずは、最低限生きていける施策でもいいではないですか。出来ることからやるべきです。

今井絵理子議員:私の子は知的障害とは障害種別は別ですが、でも親亡き後のことっていうのはものすごく私自身にも考え深いものです。将来あるお子さんたちが安心して住める社会づくりを頑張ってまいりたいと思います。

今井絵理子参議院議員

木村義雄議員:今井絵理子先生も言われていましたけれども「親がいなくなったらどうするんだ」という問題と合わせれば、もっともっと障がい者やその家族が安心していけるシステムにしないといけない。(知的障がい者の金銭面でも)基本的には障害基礎年金は所得保障の考え方から、最低限今の1級の金額が2級の金額になるようにする必要がある。

就労B型事業に関する通知(Q&A)の修正について 

第1回勉強会での指摘を受け、厚労省は「就労B型事業において、人工透析等の通院のため毎日事業所に通えない障がい者を、平均工賃月額を算定する計算から除外することができる。」とする事務連絡(平成30年7月30日付事務連絡[Q&A])に関する質疑である。

木村義雄議員:人工透析をしている方は、特例措置により平均工賃の算定基礎額から「除外できる」と厚労省が言いましたよね?これ、「除外することができる」って書いてしまうと、地方の役所によっては「除外することができるんだから、別に除外しなくてもよい」と運用する場合があるんじゃないの?

誤魔化しを推奨する書き方より、はっきりと「除外する」という明確な書き方にしたほうがよっぽどいいんじゃないの。

源河真規子(厚労省障害福祉課長):木村先生がおっしゃる通り「除外する」です。

木村義雄議員:あんた「できる」って言ったじゃない。

木村義雄参議院議員(厚労省を追及する場面より)

源河真規子(厚労省障害福祉課長):文章は「できる」となっていますが、厚労省の思いとしては「する」なので、ちゃんと徹底したいと思います。

木村義雄議員:じゃあそれは書き直すわけね?

足高慶宣(障がい者福祉研究所代表):読み方は(地方の役所が)勝手に読みますよ?「除外できる」って書き方だと木村先生がおっしゃったような現場運用になってしまう。厚労省が「除外する」と思っておられるのであれば、そう書いていただかないと徹底されない。

源河真規子(厚労省障害福祉課長):(Q&Aを)訂正させていただきます。

源河真規子(厚労省障害福祉課長)

相談支援事業の制度的な問題への追及

高森雄登(就労継続支援B型事業所スタジオプレアデス理事長):相談支援の仕事をしていると感じますが、相談支援事業所の報酬が凄く少なくて、今どんどん辞めていく事業所が増えています。ところが、この相談支援事業所を利用しないと障害福祉サービスを使えない制度になっていますので、(障がい者がサービスを受けるための)順番待ちが生まれています。

木村義雄議員:障がい者がサービスを受けるためには相談支援を通さないといけないっていう話で、これがボトルネックになっているという。これに対して厚労省はどんな問題意識を持っているの。

内山博之(厚労省健康保険福祉部企画課長):相談支援につきましては、平成30年の報酬改定でもだいぶ大きく見直しさせていただいている所でございます。

木村義雄議員:そういう問題じゃなくて、相談支援がボトルネックになっているのがおかしいんじゃないの?1つのチャンネル(ルート)が駄目だったら、2つ目のチャンネルをしっかりと用意するとかね。複線があってもいいでしょ。

木村義雄議員
内山博之企画課長

内山博之(厚労省企画課長):各市町村、都道府県の障害福祉計画などでも相談支援事業所の必要数は当然把握されていると思います。報酬でもだいぶ見直しをさせていただいているところですので、また具体的な状況をお聞かせいただければと思います。

木村義雄議員:例えば、相談支援のバイパスはないのかということを聞いているの。その地域で相談支援を受けられない場合もありますよね。遠方に行かないと相談支援を受けられないだとか、順番待ちで受けられないだとかっていうのはサービス体制として欠陥があるってことなんだから、そこは直さないと。

内山博之(厚労省企画課長):セルフプランを(知的障がい者が)自分で書いていただいて、又は親御さんに書いていただいて、自治体と相談することもできますので…

木村義雄議員:その辺りをもっと皆さんにわかるようにして、仕組みとしてちゃんと伝わるような資料を次回以降出してもらいたい。

国際基準と乖離した知的障がい者の定義・人口数

足高慶宣(障がい者福祉研究所代表):平成17年頃まで知的障がい者の数は約50万人とされていました。それが平成25年頃には約70万人まで増え、平成28年の調査では約108万人にまで増えている。他方で、IQ70という国際基準で計算すると日本には約280万人の知的障がい者がいなければおかしい。何故これだけの違いが出ているのか。

大川豊(大川興業総裁):知的障がい者のIQの問題ですが、ヨーロッパではIQ70を基準にしていたりしていまして、実は日本にはかなり多くの軽度知的障がい者の方がいらっしゃるかと思います。例えば、オランダの場合は、IQ75から80の方を境界知能者としており、要するにグレーゾーンという扱いにしています。

実際に日本では、実際には軽度知的障がい者だけど認定されていない方が、刑務所に出入りすることも起きていると思います。ただ、(認定されていない軽度知的障がい者が)刑務所に出入りして警察のお世話になって無駄な経費を使うよりも、知的障がい者の基準を明確に数値として決めて、それに合った職業訓練などをしていただきたい。

大川興業総裁・大川豊氏

木村義雄議員:(厚労省に対して)知的障がい者のIQの問題はどう考えてるの?

内山博之(厚労省企画課長):IQの点は、私どもは障害福祉サービスを所管しておりますが、教育の面や福祉の面やあるいや雇用の面、この辺りと密接な連続性を持っての政策展開が必要と思いますので、今後ともこういった部署との連携を強めてまいりたいと思います。

<厚労省より知的障がい者の人口数の増加やIQ基準について明確な回答は得られなかった。>

8050問題(終の棲家・所得保障)解決に向けた議員連盟設立へ

三原じゅん子議員:これだけ皆さんから様々なな質問があることは、色々な課題がたくさんあることの証明だと思っております。私達議員はそのことを重く受け止め、木村義雄議員を会長とする議員連盟を作らせていただき、沢山の議員がしっかりと考えて、皆様と心を一つにして様々なことを一つずつ解決していく。このことを懸命に頑張っていきたいと思います。

第2回勉強会の意見交換等の様子

社会福祉法人茶の花福祉会 施設長 白井昭光氏
障がい者の保護者 柴崎久美子氏
スタジオプレアデス 理事長 高森雄登氏
社会福祉法人三和会 理事長 藤澤敏孝氏

資料

議事録[PDF]

> 第2回 知的障害者の抱える諸問題と明日へ繋がる政策を考える会 議事録

当日配布資料[PDF]

> ① 式次第(第2回用、3枚セット)

> ②第1回勉強会にて明らかにされた制度的課題・意見

> ③【10月15日版】知的障がい者問題勉強会レジュメ

> ④障害福祉サービス等予算の推移(厚労省)

> ⑤-1知的障害者定義(WHO ICD-10)

> ⑤-2知的障害者定義(Wiki)

> ⑥保護司に対する配布資料

招集通知(一般)[PDF]

> 招集通知1枚目

> 招集通知2枚目

> 招集通知3枚目

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