知的障がい者の明日を考える議員連盟 ワーキングチームによる障がい者施設への現場視察
平成31年3月27日、「知的障がい者の明日を考える議員連盟」のワーキングチームは、座長の秋元司議員を中心とした計9名で、東京都葛飾区の就労系事業所、千葉県袖ケ浦市の生活介護系事業所への現場視察を行った。
(詳細は、【資料】知的障がい者施設等への現場視察レポート[PDF]参照。)
トピックス
- ワーキングチームは、現場の問題を現場目線で解決するため、「NPO法人めぐみの」(東京都葛飾区)と「社会福祉法人柊の郷」(千葉県袖ケ浦市)への現場視察を実施。
- 「NPO法人めぐみの」では、現行の就労系制度では障がいが重い方の行き場が失われる未来であること、厚労省の意向と地方行政の運用の乖離等が明らかとなった。
- 「社会福祉法人柊の郷」では、地方行政のローカルルールが原因で、行き過ぎた行政調査により障がい者が被害を受けた事例、行政指導により檻の様なフェンスに囲まれた施設での生活を余儀なくされている障がい者の現状が明らかとなった。
現地視察参加者(敬称略)
1.議員連盟所属議員参加者
① 衆議院議員 秋元司 (ワーキンググループ座長)
② 衆議院議員 青山 周平 (議員連盟 幹事)
③ 衆議院議員 三ツ林裕巳 (議員連盟 幹事)
④ 衆議院議員 安藤たかお (議員連盟 幹事)
⑤ 衆議院議員 浜田 靖一 (議員連盟 副会長、秘書代理出席)
⑥ 衆議院議員 平沢 勝栄 (議員連盟 幹事長、秘書代理出席)
⑦ 参議院議員 三原じゅん子(議員連盟 事務局長、秘書代理出席)
2.随行者
① 障がい者福祉研究所 代表 足高 慶宣
② 大川興業株式会社総裁 大川 豊
NPO法人めぐみのへの現地視察
基礎情報
東京都葛飾区新宿2丁目12番25号(理事長:山下三成)
http://npo-megumino.com/
運営内容
平成25年7月、東京都葛飾区にて「NPO法人めぐみの」設立。
主に軽度の知的・精神障がい者(児)を対象として、就労移行支援・就労継続支援B型、放課後デイサービス等を運営。
訪問場所
NPO法人めぐみの 就労移行支援事業所すずかぜ
1.「NPO法人めぐみの」の就労系サービスへの取り組みについて
NPO法人めぐみのでは、葛飾区・江東区・足立区・墨田区等の障がい者の方々に対し、一般企業での就職を目的としたトレーニング(就労移行支援等)を提供している。
同法人では、支援に対話を中心とした認知行動療法を取り入れ、利用者の着実な就労実績を上げ続けている。
2.福祉現場が抱える諸問題のヒアリング
本視察において、福祉現場の諸問題に関して同法人からヒアリングを行ったところ、下記の具体的な問題点が明らかとなった(一部抜粋)。
(1)現行の就労系サービスの報酬算定構造は、障がい者の取捨選択に繋がること。
【概要】
① 現行の事業者への報酬額は、障がい者(サービス利用者)の一般企業への就職実積率、障がい者が得た平均工賃額により決定される。
② 事業所の経営を考えた場合、より高額の報酬を得る為、一般企業への就職が可能な程度に「能力の高い」障がい者の取捨選択が行われることになる。
結果として、中度・重度の障がい者は、就労系サービスを受けることすらできず、行き場を失うことになりかねない。
(2)厚労省の制度設計と矛盾する地方行政の対応
【概要】
① 厚労省は、報酬算定によって事業者に対し厳しいノルマ(障がい者の就労実績)を課している。
② 他方、障がい者の就労実績を重ねれば、事業所の利用者が減少してしまうが、新規利用者の獲得に関しては、葛飾区を含めた地方行政は事業所の自己責任と言って一切関与しようとしない。
両議員とも医師であり、厚生労働省と地方行政の運用面の乖離を身を以て経験している為、問題解決の手法を真剣に検討されていた。
(3)利用者のサービス受給者証発行に関するタイムロス
① 障害福祉サービスを利用するためには、障がい者ごとに相談支援事業所によるサービス受給者証の発行が必要となる。
② しかし、相談支援事業所の供給不足・過大な業務負担により、受給者証発行まで数カ月かかるケースが生じている。当然、発行までサービスを受けることは出来ない。
3.事業所内見学
ヒアリング終了後に行われた事業所内見学では、事業所を利用される知的・精神障がい者の方々と直接交流を行うことができた。
NPO法人めぐみのでは、比較的軽度の障がいを持つ方々を受け入れており、同じ箱詰め作業でも小さい部品やおもちゃといった精密さが要求される作業を多く実施されていた。
社会福祉法人柊の郷への現場視察
基礎情報
千葉県袖ケ浦市林437番1(理事長:足高慶宣)
http://www.hiiragi.or.jp/
運営内容
平成11年11月、奈良県葛城市にて社会福祉法人柊の郷を設立。
平成27年6月に主に重度の知的障がい者を対象として、千葉県袖ケ浦市にて生活支援事業所・グループホームを開所。
訪問場所
社会福祉法人柊の郷 生活介護事業所上総・グループホーム
同 木更津市内の新規事業予定地
1.「社会福祉法人柊の郷」の障害福祉サービスへの取り組みについて
社会福祉法人柊の郷では設立以来、重度の知的障がい者を主な対象として障害者支援施設(入所施設)など24時間対応型のサービスを提供している。
本視察場所の生活介護・グループホーム(袖ケ浦市)では、入所施設に入所できなかった方々に対し、現行制度の中で実質24時間体制の支援サービスを提供している。
2.福祉現場が抱える諸問題のヒアリング
本視察において、福祉現場の諸問題に関して同法人からヒアリングを行ったところ、下記の具体的な問題点が明らかとなった(一部抜粋)。
(1)障がい者の人権に配慮した法改正を速やかに行う必要があること。
【概要】
① 現行の障害者総合支援法は、行政が施設や障がい者に対して調査を実施する際、障がい者に対する配慮事項の記載がない。更に、障がい者が行政の質問に答えない場合、刑罰が科される規定となっている。
② 事実、千葉県の立入調査により、柊の郷の障がい者はPTSDに陥る等している。全国に関わる問題として、速やかな法改正が必要である。
(2)地方行政のローカルルールにより、経済的合理性に欠け、利用者に危険が生じかねない状況での施設運営等を強いられていること。
【概要】
① 現行の法制度は、施設の設置基準等の大部分を県条例・県の解釈通知に委ねている。しかし、県の解釈通知ですら抽象的であり、結果として県行政のローカルルールが跋扈している。
②【具体例1】
千葉県の「各施設は独立していること」という趣旨の指導で、檻の様なフェンスの設置、危険な国道を通行する移動ルートの指定、私有地の公道化などが許認可の条件(ローカルルール)とされた。
③【具体例2】
県の「グループホームを『集約』させないこと」という抽象的な解釈通知・ローカルルールにより、約4千坪の事業用地にグループホーム1棟という極めて経済的に不合理な状況が生じた。
結果、厚生労働省はグループホームを推奨するのに、県の独自ルールにより建設が制限・留保されるという事態が生じている。
3.事業所内見学
グループホームの金網フェンスや危険な移動ルート等の現場を確認した後、生活介護事業所上総内の見学を行った。
なお、柊の郷より参加議員に対し、千葉県の行政調査によって障がい者の中にはいまだにスーツ姿の男性を見かけると怖がる方がいるとの説明を受けたため、参加議員はジャケット・ネクタイを外して見学を行った。
資料
現場視察[PDF]
> 知的障がい者施設等への現場視察レポート
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