第4回 知的障がい者の明日を考える議員連盟・第5回 知的障がい者の明日を考える会
-知的障がい者の終の棲家実現に向けた提言へ-
令和元年6月6日、自民党国会議員25名を含む計124名により、第4回議員連盟及び第5回勉強会が開催された。同会では、親亡き後の知的障がい者問題(8050問題)の解決に向け、短期的・中期的課題に対する提言がなされることとなった。
トピックス
- 知的障がい者の「終の棲家」実現に向けた提言が議員連盟で承認された。
- 短期的課題に対し、知的障がい者の人権擁護に関する通知の実施、相談支援事業に関する実態調査が提言された。
- 中期的課題に対し、知的障がい者の定義化、療育手帳の交付基準の統一化を前提とした実態調査の実施が提言されている。
- 議員連盟として、提言を公表する記者会見を実施することが決定された。
議事録の抜粋
知的障がい者の人権に配慮した行政調査の徹底へ
青山周平議員(ワーキングチーム座長代理):障がい者等に対する行政調査を認めている障害者総合支援法の規定については、障がい者の人権や特性への配慮を徹底しなければいけない。これは、行政が施設への調査を行った際、知的障がい者へも厳しい調査をしてしまった結果、パニックに陥る被害を受けたことを踏まえての提言となります。
他の施設でも同様の事件が起こり得る可能性があり、迅速な対応が必要であるため、課長通達等により自治体への周知徹底を行っていただきたい。
源河真規子(厚労省障害福祉課長):障がい者に限らず人権に配慮することは当然のことですし、重要だと思っております。どのようなやり方で周知するのが効果的かということを含めて検討し、木村会長にもご相談させていただきながら対応させていただきます。
藤澤敏孝(社会福祉法人三和会理事長):(行政調査を拒否した障がい者への罰則について)私はなぜ知的障がい者だけが通訳者の立会いがなくても良いことになっているのかと、非常に疑問に思っています。障がい者の冤罪率ってかなり高いと思うんです。そこに社会福祉士などが立ち会って「今の質問はあなたの不利益になるから答えなくていいですよ」と助言してやれば随分違うはずなんです。是非、通訳者の配置を制度にしていただきたい。
相談支援事業におけるローカルルールの撤廃へ
秋元司議員(ワーキングチーム座長):相談支援事業における事業の効率化・スリム化を行うべきだと思います。
相談支援事業は各自治体の相談員が支援計画を作成するわけですが、ある自治体は数枚、別の自治体は何十枚、そして県を跨げば書式も違うという著しいローカルルールが存在します。この様な問題を解決するべく、第1段階として厚生労働省にまずは全国の実態調査を行っていただく。それを踏まえて、自治体間での情報共有をしっかりと行い、事業の効率化を図ってもらいたいと思っております。
山口正行(厚労省障害児・発達障害者支援室長):今回のご提言を踏まえまして、実態把握のための調査の実施について検討してまいりたいと思います。
木村義雄議員:実態調査するっていうけど、実態調査した結果、問題点が既に出てきているんだから、その問題点をどう解決するかっていうのが一番重要なんでしょ?実態調査、実態調査って言うけれど、大体、厚労省の調査なんてあんまり信用されていないんだから。
皆が実態調査をして改善して欲しいって言っているんだから、しっかり調査して、調査した後にさぁどうするんだっていうことを聞いてるんだよ。厚労省が実態調査するっていうことはそういうことでしょう。実態調査をして、その後に具体的に改善策をどうするのかっていうことでしょ。ちゃんとやってよ。
山口正行(厚労省障害児・発達障害者支援室長):今回書式の統一化という提言をいただいた経緯が、地方ローカルルールで業務負担が増加傾向にあるという趣旨でしたので、それを踏まえてきちんと調査をして検討したいと思っております。
木村義雄議員:介護の分野では、同じような書式統一化の事例に対し年内に対応すると言っているんだけど、障害の方はどうするの?
山口正行(厚労省障害児・発達障害者支援室長):実施時期については、実態調査の費用とかもありますので、調査研究をどこに入れられるのかをこれから検討したいと思います。
木村義雄議員:だからさ、介護の方と非常によく似ているんだから、介護の対応を踏まえて参考にして直ぐに結論を出しなさいよ。またあらためて調査するって言っても、大体中身はわかっているんだから。
厚労省も提言書に甘えちゃだめだよ。実際、介護の方では、やるって決めて、具体的な項目もどんどん出して、書類もだいぶ出来上がってきていて、それでも年内を目途にまとめると言っている。
介護に倣ってしっかりとやりなさいよ。介護が年内なら障害は年度内にやる、そのぐらいの意気込みで取り組みなさいよ。
山口正行(厚労省障害児・発達障害者支援室長):はい、この提言の趣旨をきちんと踏まえて対応してまいります。
知的障がい者の定義・療育手帳の認定基準の統一化
青山周平議員(ワーキングチーム座長代理):終の棲家を見据えた継続的かつ合理的な政策を実現する為にも、知的障がい者手帳(療育手帳)の認定基準や表記に関し、速やかに全国自治体への実態調査を行い、全国統一的な明確な基準を創設する必要があります。
現状のままでは、同じ知的障がい者が、他県へ移動しただけでA判定からB判定に認定結果が変わることになりかねません。速やかな是正が必要であろうということで、提言をしています。
内山博之(厚労省障害保健福祉部企画課長):昨年度から各自治体が療育手帳をどのように発行しているかにつきまして、調査研究を進めているところでございます。各自治体の判定基準の現状と課題を把握した上で、その在り方について検討してまいりたいと思います。
渡雅代(社会福祉法人若宮福祉会理事長):療育手帳のお話がありましたが、療育手帳のA判定とB判定の違いについて両者でどう違うんですかっていうことですが、医療費控除の点で大きく異なります。
病院を利用した際、A判定の方は負担金がありません。でも、B判定の方は病院に通院したり入院したりすると、3割負担なんです。障がい者の唯一の財産っていうのは障害者年金しかありません。この年金の中で病院の3割負担は非常に重い負担です。だから何とかして病院にかからせないようにしても、病気になる時はなります。
こういった現状について、厚労省の方はどのようにお考えなのでしょうか。
源河真規子(厚労省障害福祉課長):今おっしゃられた医療費助成の関係は、私共ではちょっと分かりかねるのですが、おそらく都道府県独自の補助ではないかと思います…。
三原じゅん子議員:今の回答で大丈夫ですか?大丈夫じゃないですよね?どうぞ。
渡雅代(社会福祉法人若宮福祉会理事長):障害者年金のおかげで障がい者の方々は毎日生活できています。だから年金っていうのは生活の糧であって、グループホームを利用しようにも年金がないと利用すらできないわけです。
実際に施設を利用する際、A判定(重度)の人もB判定(重度以外)の人も、サービスの内容って実際は変わらないんですね。病気にかかるもかからないも同じなんです。少なくとも、同じ施設を利用する人たちは、(病院を受診できる機会も)平等でなければならないと思うんです。
でも、書類の文言がちょっと違うだけで療育手帳でB判定を受けたり、障害者年金も2級になってしまうこともあります。だから、医療費助成の部分は本当に真剣に考えていただきたいと思います。
知的障がい者の8050問題・終の棲家と所得保障
木村義雄議員:障害者年金は、所得保障の問題として一番最大の課題でもあるんです。私がいつも皆さん方に所得保障のお話をするのは、1級2級の障害者年金の金額が少なすぎますよ。だからここを直さないとしょうがない。
特に年金の話になると、障害者自立支援法の制定時には大問題になったんです。厚労省としては、最終的に障がい者を全員介護保険に移行させたいがために、一律1割負担を課そうとした。財源を全て介護保険に移そうとした。
でもそれは間違っているんです。介護保険はあくまでも民間の保険料ですから。障がい者の問題は保険の問題ではなく国が責任を持って対応しなければいけない。
所得保障の問題は、少なくとも2級の金額は今の1級程度の金額にしないと安心できる状態にはならない。その上で、次は終の棲家という本当に重要な問題に取り組んでいく必要がある。
一生懸命頑張って取り組んでまいりますので宜しくお願いします。
第4回議員連盟・第5回勉強会の意見交換等の様子
資料
議事録[PDF]
> 第4回議連・第5回勉強会合同会議 議事録
当日配布資料[PDF]
> ①【第4回議連】式次第
> ③【議題1】WT提言書案
> ④【議題1参考資料】療育手帳の区分について
> ⑤【勉強会資料】福祉現場における現実的な諸問題に関する意見一覧(14P)
> ⑥【勉強会参考資料】障害者総合支援法条文(調査権限・罰則)
> ⑦知的障害者数の比較
招集通知(一般)[PDF]
> 招集通知1枚目
> 招集通知2枚目
> 招集通知3枚目
動画
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