【第3回対談】そのだ修光議員×三原じゅん子議員×大川豊氏 後編
-第3回対談動画(後編)-
知的障がい者の明日を考える議員連盟の会長代理として活動されている「そのだ修光議員(参議院議員)」をお招きして、第3回対談を実施しました。
対談後編では、高齢化が進む知的障がい者の方々が、必要に応じてキチンと介護施設に移行できるのか、同時に介護施設側はどのような状況なのかをお聞きしました。
※障がいに関する記載について
対談記事の中で、法律用語や制度を示す際は、正確性を期するため「障害者」という用語を使用しています。
知的障がい者の高齢化問題
大川豊:いわゆる知的障がいの方が、65歳以上になると特養に移ると言っても移れないですよね。
そのだ修光:(特養に知的障がいの)専門家はいないからね。本来、特養なんて要介護3以上は入れられるんですよ。うちの施設はもちろん、そういうお願いが来て、我々もケアマネージャーさんたちも「引き受けましょうね」ということはあるんですけど。ちょっと障がい者の皆さんに対しては、(スキル的な問題で)うちですぐに受け入れられるかなっていう不安がある。
大川豊:経験値がすごく大切だと思うんですよ。
そのだ修光:今言われた通り、知的障がい者の高齢化が進んじゃって、それどうするのと。家族はだんだん年を取っていくから、自宅で看られるような状態じゃないの。どうしますかっていう。これも大きな問題ですよね。
急増する65歳以上の知的障がい者
大川豊:65歳以上の知的障がい者の方は、在宅支援だと平成23年だと5万8000人、平成28年に一気に14万9000人に増えていらっしゃいまして。入所施設でも平成25年に2万3263人だったものが、平成28年にはいきなり2万7835人と、入所施設でもどんどんこの高齢化が進んでいる。
そのだ修光:しっかり取り上げていかないと、ますます増えてきますよ。
障がい者福祉研究所(足高):ニュースになりましたけど、知的障がい者の方の平均寿命が延びています。例えば、ダウン症の方であれば、先日のニュースでも、この50年間で平均50年伸びたと。嬉しいことなんですけれどもけど、この後、起こってくるのは、今までやはり高齢者の方が少なかった知的障がい者だけれども、今後は元気な知的障がいの高齢者の方が増えてきますので、どうやって対応していくか。
ダウン症のある人の約半数は生まれつき心疾患があるため、1970年ごろまでは平均寿命が10歳ぐらいだった。ところが手術で助かるようになり、最近の寿命は60歳くらいとも言われている。
朝日新聞デジタル:ダウン症の人の寿命、50年で50歳伸びる 不足する医療の受け皿
実際現場の意見を聞いていると、今入所施設に入っていたとしても、やはり高齢化が進んでいて医療的ケアが生じているとか、足腰が本当に不便になった時にどこに行けばいいんだってなってくるんですね。親御さんの意見や施設の意見を聞いていると、(知的障がい者の方が)介護保険を活用できるのかという不安をすごく抱えていらっしゃいます。
そのだ修光:これ大事な問題だよね。これ急に増えたっていうのなんか意味があるの?
大川豊:医療も進歩したのもありますけれども、かなりの方がその療育手帳とかちゃんと取るようになられたりして、勉強会でもちゃんと知的障がいの認定を受けさせてあげてくださいとか。そういうことで一気に広がりがありまして。
そのだ修光:三原先生、これ(現状の介護保険では)対応できてないよ。
三原じゅん子:できてないんだけど、もう65になったら特養へ行ったらどうですかっていうようなふうになっているんですよ。そんな簡単に受け入れてもらえるはずがないのに。
大川豊:職員の方だってものすごい負荷がかかるので。専門分野だと思うんですよ。
障がい者福祉研究所(足高):知的障がい者の方専門の特別養護老人ホームがすごい求められています。
現状、入所施設を国の指針で作らせてくれないので、高齢の知的障がい者と若い知的障がい者の方が同じ入所施設に入るんですよ。そうすると同じ施設の中で、80歳近い知的障がい者の方と20歳の元気な知的障がい者の方が一緒に生活するので、現場目線というと、それだけで怪我する可能性があるんですよ。走り回る方にぶつかったりとか、そういった支援の困難さもかなり出てきています。
やはり、もう、知的障がい者の枠の中で、そういった専門性スキルを持った専門の施設というのもかなり今求められている。
そのだ修光: 今日、総裁と三原先生とお話しするにあたり、うちの(施設での)対応はどうかと思って、連絡をしたら、病院から(受け入れて欲しい旨の連絡が)来るんだって。もちろん受け入れられる人は入れているんですけど、どうしてもやっぱりうちでも看ることができない人たちがいるんですよ。
大川豊:強度行動障がいの方がいらして、どうしても暴れてしまうとか、唾を吐いてしまうとかっていうことがあったりするので。
そのだ修光:(他の方が怪我をすることもあるので)なかなか一緒にはできない。
大川豊:それに慣れた方でないと看られなかったりとか。
知的障がい者施設で受け入れられるのは原則65歳まで
そのだ修光:(高齢の知的障がい者専門の)その施設っていうのはないの?独自の。皆さんの現場の中では作れないわけ?
障がい者福祉研究所(足高):制度的に原則として障がいの施設は65歳まで。
三原じゅん子:じゃあそのあとはどうするんですかと言ったら。
大川豊:介護保険でって。昔からそれ言われて、介護施設で受け入れていただけないので、そこをどうしたらいいんですかって。
そのだ修光:これね、わかりました。
大川豊:この大きな声で予算委員会での問題提起を。
そのだ修光:必要ですよ。
特養と知的障がい者施設の連携事例
大川豊:例えば我孫子の方では、特養の近くに、知的障がい者の方のグループホームを作って、連携をうまくやっているところがあったりするんです。なぜかというと、土日に親御さんが迎えに来ない時は、特養ホームのラウンジでみんなと一緒にお食事していいですよとか。逆に、元気な方は、特養のホームの中で片付けを手伝ったりとか、お手伝いをすることで。特にヘルパーさんとかが、何かあった時にすぐグループホームに行けるとか。そういううまい連携をとったりして頑張っている施設もあることはあるんです。
そのだ修光:そのグループホームっていうのは、障がい者のグループホーム?
大川豊:そうです。
そのだ修光:我々(介護側)が言うグループホームは認知症対応型グループホーム。障がい者のグループホームで?
障がい者福祉研究所(足高):障がい者グループホームはありますが、こちらもまだ原則として65歳まで。ただ、市町村の裁量なんですけれども、やはり(高齢の知的障がい者の)行き先がないので、「じゃあ、65歳を過ぎてもグループホームで生活してもいいですよ」という運営をしていただいていることが多いです。 それも今、高齢者の人口が増えてくる中で、今後そこで生活し続けられるのかというのは…。
三原じゅん子:だから在宅にしようとする。そんな65過ぎて在宅なんかなれないって。じゃあ特養でというのも難しい。
大川豊:(施設では)皆さんと日頃からコミュニケーションを取ることで、障がい者グループホームで65を過ぎてちょっと体力が落ちてきたって言ったら、この施設でお互い元々顔見知りの状況で(特養の方に)移れるので、なんとか頑張れるとか。
もこれは限界がありましてですね。たまたまそういうことにチャレンジしている施設があったからそれができているだけであって、これが全国とかになると…。
ご家庭での高齢知的障がい者介護は可能か?
三原じゅん子:これも市町村の裁量だものね。65過ぎたけど、ちょっと目つぶっとくよっていうようなものですよね。これがどんどんどんどん増えていったら、そうはいかない。
大川豊:怖いんです。だから、(ご家庭の)在宅でって自治体の方の方は、みんな言うと思います
三原じゅん子:(ご家庭での)在宅になったらほんとに共倒れになってしまいますよね。
そのだ修光:できない。
三原じゅん子:もう無理ですよね。親御さんだけでは。
そのだ修光:これ、なんとかして片付けなきゃならない。
高齢者施設での受け入れの可能性は
三原じゅん子:高齢者施設側の負担もすごいことになりますよね。
そのだ修光:まず(知的障がい者の方々の)入居ができないですから。
現場の職員も同じ。(知的障がい者の方への支援が)できるかっていうと、そう簡単にはできない。今でも職員なんか足りないのよ。足りない現場の中で、(今まで経験したことのない)人たちがとんと入ってくれば、従来から入っている人たちとのコミュニケーションも難しいし、とんでもないことになってしまいますよ。
【参考】知的障がい者支援の専門家の不足
介護施設の利用には、ケアマネージャーによるケアプラン(介護サービス計画書)の作成が必要となります。しかし、ケアマネージャーの多くは、知的障がい者支援の経験がないため、ケアプランの作成が非常に困難になります。
三原じゅん子:こういう問題が実はすごくあって
そのだ修光:わかりました。
大川豊:もしうまくいけば、連携ができるようなことができると思うんですよね。
三原じゅん子:高齢化するのが悪いみたいな、そんな風な世の中、作っちゃいけないです。この先をきちっと決めて差し上げないと。
大川豊:だから、もう例えば職員の方の給与も含めて、ちょっと色々考えていただかないと。
そのだ修光:(知的障がい者支援の)専門的な人がいないと看られない。普通の特養で看ろと言われても、そんなスキルを有する職員なんかいない。
三原じゅん子:同時に医療も必要になってくる。
知的障がい者に特化した特養の必要性と養護施設での受け入れの可否
そのだ修光:高齢の知的障がい者の方に特化した、特養の認可をするような形。そこには今、先生が言われる専門性と医療が必要だよね。
大川豊:養護施設というのがあるんですよね。
そのだ修光:障がい者に特化した養護(老人ホーム)ってあるの?
障がい者福祉研究所(足高):正直、現場の方はそういった認識はないです。
そのだ修光:養護老人ホームは養護老人ホームでやっているんだけど、養護老人ホームは市町村が運営していたのを民間に委託をしたり、民間に今どんどんさせている。させた後は、措置控えといって、養護老人ホームっていうのは市町村を認めた人しか入れないんですよ。あんまり入らないように認めないんです。市町村が。
大川豊:高齢の知的障がい者の方は養護施設でと言われたこともあるんです。
そのだ修光:いやそこで看るっていうのはこれまた大変な状況だと思うよ。養護はベッドが空くんですよ。市町村が措置控えでどんどん入れなくしているから。そこに入れると言っても、専門性のない人たちだけが看られるか、ちょっと看られないから、それはただ口で言うだけの話だよ。
大川豊:そうですか。ベッドは空いているとは言われたんです。
そのだ修光:空いているんだけど、その皆さんがいう人たちを現実に入れなさいと言ったらどうなるかっていうのは。そこには専門性の人を入れてやらないと。これ、できないから。今の養護の状態では。そう簡単じゃないよ。
大川豊:それは困りましたね。
そのだ修光:そう、簡単じゃないんですよ。
障がい者福祉研究所(足高):強度行動障がい者の場合、他者を攻撃してしまう人とか、自分で異食、落ちているものを食べてしまうとかありますので、かなり気を遣って支援しています。そういった方を、特養とか養護老人ホームで受け入れてくれるかどうかというと、やっぱり専門性が難しい。
障がいの分野でもそういった専門性のある職員は不足しています。逆に、老人ホームの方で、そういう(知的障がいの)専門性の強い人を抱え込もうとしても、逆に集まらない。
そのだ修光:問題点いくつもあるよね。高齢者は増えていくんだから、対策練っていかないと。
三原じゅん子:この議連でですね。
そのだ修光:ひとつひとつやりましょう!