第11回 知的障がい者の明日を考える議員連盟

令和6年6月18日、自民党国会議員21名により、第11回知的障がい者の明日を考える議員連盟が開催されました。同会では、障害基礎年金と特別児童扶養手当の谷間問題、AI機器・見守り機器の導入、重度者専用ホームの提言等の議事・質疑が行われました。

※当日配布資料は本記事下部からダウンロードを行っていただけます。


冒頭挨拶-知的障がい者数の認定、国際基準に近づく-

冒頭の挨拶で野田聖子会長は、議連が発足して以来、国際基準と比べて日本の知的障がい者数の認定が極端に少ないことを指摘してきたことにふれ、「(知的障がい者の認定数が)74万人から126万人に増えた。多くの方たちの気づきがあって認定されることで、様々な福祉の道が開かれる」と実績を強調されました。

【参考】障害者の数(厚生労働省)

1.障害基礎年金と特別児童扶養手当-18歳・19歳谷間の問題-

<問題の所在>
障害基礎年金は20歳にならないと支給されないため、18歳・19歳でグループホームや生活介護等を利用された場合には、家賃・水光熱費・食費等の自己負担金が本人や家族に重くのしかかることになる。18歳・19歳で子を監護する親に対しては、特別児童扶養手当の支給がなされるが、障害基礎年金に対して支給額が少ないため、18歳・19歳の間の負担解消を図る必要が生じている。

障害基礎年金と特別児童扶養手当の比較

―18歳・19歳の谷間世代に対し、仮に障害基礎年金を支給した場合の試算は?

芦田雅嗣(厚労省年金局年金課年金制度改革推進官):令和3年度の数字を使用し、仮に18歳、19歳の方に障害基礎年金を新規に支給する場合の粗い計算をしてみましたところ、追加の障害基礎年金には年間約700億円程度になります。

勝目康(衆議院議員):特別児童扶養手当ですけれども、監護の話もあるんですが、所得制限が低い水準とはいえないか。今、児童手当の所得制限がなくなり、そして身体障がい児の補装具の支給も所得制限がなくなってきている。このような中で、特別児童扶養手当の所得制限も見直すべきではないか。

勝目康 衆議院議員

江口満(厚労省障害保健福祉部企画課長):特別児童扶養手当の中に書tく制限がありますので、(親に)就労されて一定以上の所得があれば制度上、支給しないことになります。例示として、4人世帯、父母とお子さん2人という場合には、770万円というのが基準となります。(中略)(入所施設等に)入所した場合には、監護が父母ではなく、施設長にあるという考えに立っています。(中略)制度創設以来、施設入所者の親には支給しなくて良いということになります。

特別児童扶養手当の概要(厚労省資料)

三原じゅん子(幹事長・参議院議員):18歳・19歳に特別児童扶養手当が支給されるとしても、やはり障害基礎年金に比べて支給額が少ない。グループホームの家賃や水光熱費も年々上がっている実態があり、18歳・19歳の谷間にいて困っている人たちを支援する必要がある。

三原じゅん子 幹事長

2.AI機器・見守り機器の知的障がい者分野への導入について

<問題の所在>
超少子高齢化が進む中、今後より一層のAI機器・見守り機器の効果的な導入により、支援の質を維持しつつ介護福祉人材難に対応する必要がある。現状、AI機器に関しては、介護分野と共用できる夜間見守り機器が主流となっているが、今後は知的障がい者分野に特化したAI機器等の導入も検討する必要がある。

―AIの進歩が加速する中で、今後のAI機器・見守り機器の知的障がい者分野への導入について、厚労省の考えは?

伊藤洋平(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):現場の厳しい労働状況、人手不足の状況ですとかを我々も聴取しておりますので、もちろん賃上げも報酬改定でかかっておりますが、できるだけICTとかテクノロジーを活用して、現場の負担を少しでも減らしていくという基本的な方向性は当然ございます。

青山周平 事務局長(司会進行)

3.能登半島沖地震 障がい者施設の復興支援状況

伊藤洋平(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):能登半島沖地震に関しては、発災直後から政府を挙げて支援、救助を含め対応しており、障害分野も同様にやっております。特に障害分野でいきますと、いろいろな障がいの種別ごとの関係団体がいろいろございますので、そういった方々にも応援を返っていただいたり、対応を協力いただきながらここまでやってきております。(中略)障害施設に関しては、やはり障害特性からなかなか避難というのは難しかったという事情ももちろんあるんですが、比較的ずっと頑張って現場の施設の方に稼働を続けていただいたという経緯があります。したがって、この状況は今6月時点でこの状況ですが、わりと同じような状況が続いております。そういう中でも、例えば入所施設やグループホーム等で言いますと、現在で8施設稼働していない。そういった施設では現在、広域避難の場合もありますが、ご利用者さんに避難していただいて、修繕、建て直しを待っていただいております。もちろん稼働中の施設でも、いろいろ設備が壊れたり、壁が壊れたり、それがありますので、多くの施設で国からの補助金を使っていただいて、今、順次、修復を進めていると、そういった全体状況でございます。

能登地方6市町における障害者入所施設・事業所等の稼働状況(厚労省資料)

大川豊(大川興業総裁):各自治体からは二次避難が上手くいったと厚労省には伝わっていると思います。ただ例えば、弘和会という施設がたぶん全国で初めて、最重度の利用者と家族で一緒に名古屋に避難したケースがあります。ただこれはやり民間同士の協力の結果でもあって、こうした成功事例をしっかりと分析し、今後の生かしてほしいです。

大川豊(大川興業総裁)


また、現場ではDMATの方はおられるのですが、福祉介護をしたことがない方がかなりいらっしゃった。やはり、DCAT(災害派遣福祉チーム)の役割が大きい。これには法的根拠がなく、都道府県によて設置状況もまちまちです。是非とも災害対策基本法で明確な立場を与えて、障がい者への対応もしっかりと想定していただきたい。

輪島市の施設の被災状況➀(大川興業撮影)
輪島市の施設の被災状況②(大川興業撮影)輪島市の施設の被災状況②

4.知的障がい者の終の棲家問題-重度者専用ホームのモデル事業を―

野田聖子(会長・衆議院議員):重度の知的障がい者を収容できる施設が基本的に不足しているので、この行き場のない障害支援区分5,6の方たちの施設整備を早急にやっていかなければならないわいです。重度障がい者、そして強度行動障害者専用の入居ホームというのを、まずはモデル事業でいいのでどこかに作っていただいて、現実的に運営できるような報酬もきちっと出していくべきではないか。

山本左近(衆議院議員):人材は限られている中で、この施設から(地域やグループホーム等に)移行していくことが、全て正しいとかといったところには、改めて私は意見をさせていただきたい。その地域の中で施設もあり、グループホームもあり、また地域の支援もありという、全てを使っていかなきゃいけない中で、(地域移行を)進める必要があるという発想自体が、そもそも今必要なんでしょうか。

山本左近 衆議院議員

伊藤洋平(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):地域移行の課題は我々も簡単なこととして言っているわけではございません。もちろん施設に必要な役割もあると思いますし、そこは両方かなと思っております。(中略)意思決定支援というように言われますが、やはりご本人の意向で、自分は施設に残りたい、自分はできれば家で暮らしたいか、ご本人の意思が基本となる考え方が重要かなと考えております。

三ツ林裕巳(衆議院議員):A型就労、B型就労とありますが、一般就労に向けて知的障がい者も就労できるような仕組みを厚労省発でやっていただきたい。18歳、19歳の特別児童扶養手当も必要ですが、ずっと福祉の中で生きていかなければならない。一般就労して本当に仕事をしたい方もいらっしゃる。

三ツ林裕巳 衆議院議員

伊藤洋平(厚労省障害保健福祉部障害福祉課長):障がい者の法定雇用率が段階的に引上げになっています。障害福祉サイドとしましても、昨年の法改正により、新たに就労選択支援というサービスを来年10月からスタートします。これはまさに本人の職業、労働能力のアセスメントのサービスです。やはりできる方、一般就労可能な方にも働ける機会を提供することを色んなポイントでやっております。


資料

PDF形式のファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。

Adobe Readerをダウンロードしてご覧頂けます。