第1回 知的障がい者の明日を考える会
-知的障がい者の8050問題・終の棲家の解決に向けて-
平成30年7月11日、知的障がい者の8050問題等の解決に向けて、木村義雄参議院議員を発起人代表として勉強会が開催された。同会には、全国の施設関係者、知的障がい者の保護者、自民党国会議員、関係省庁の計95名が出席し、知的障がい者福祉の現場について率直な意見交換が行われた。
トピックス
- 「知的障がい者の8050問題」とは、知的障がい者の長寿化に伴い、80歳前後の親が50歳前後の知的障がい者を養う状況が生じ、親自身の病気や介護問題で親子共倒れになってしまう社会問題を指す。
- 知的障がい者の明日を考える会では、深刻化する8050問題の解決に向け、親亡き後に障がい者が生活できる場所(終の棲家)の実現が最重要課題であるとされた。
- 発起人代表の木村義雄議員は、終の棲家の実現を約束するとともに、出席者から述べられた今現在福祉現場で生じている問題について、厚労省等に対して迅速な対応を強く要求した。
議事録の抜粋
知的障がい者の8050問題の解決に向けて
木村義雄議員:知的障がい者の方の問題で一番肝心なのは、障がい者本人も高齢化しているんですけど、それよりも親御さんの高齢化が著しいということです。親亡き後の障がい者の方々の終の棲家、それを真剣に考える必要があるのではないかと。
まずは、障がいを持った方のお父様お母様が安心して子供を託することのできる、死んでも死にきれないと思った人達が福音を得て安心していただけるような制度設計をこれからしっかりと作って行かなければならない。
障害基礎年金の打切り問題について
福岡新司(一般社団法人SOWET理事長):知的障がい者が就労支援を利用した場合には、(収入を得ることになるので)障害基礎年金が打ち切られてしまう現象が全国で生じています。例えば、知的障がい者の多くは時給で就職するので、給料が低い。障害基礎年金と合わせてやっと生活できているのに、その年金を打ち切られてしまうと就職そのものが成り立たなくなってしまう。
木村義雄議員:(厚労省に対して)それさ、厚労省おかしいんじゃないの?低所得者の年金を打ち切るようなことやってるの?そんな理不尽なことやってるの?
朝川智昭(厚労省障害保健福祉部企画課長):年金は私の専門ではないのですが、私の理解ですと、年金は障害の状態で認定されますので、「就職が原因で障害基礎年金が無くなる」ということはないと理解しています。よく年金機構、年金局とも相談して確認していきます。
木村義雄議員:現実の運用では、少しでも所得を得た場合には年金を打ち切られてしまうって現場からの意見がでているけど、そこのところどうなの?厚労省の年金制度の問題じゃないの?
朝川智昭(厚労省障害保健福祉部企画課長):(年金局の担当者が出席していない為、明確な回答をすることができず。)
木村義雄議員:しっかりと(厚労省に)工夫させるように考えていきましょう。
入所施設利用時の寄付金の強要について
柴崎久美子(障がい者の保護者):色々な入所施設がありますけど、保護者が施設に対してお金を何百万円も積まないと入れないというのが、障がい者の保護者の間では噂というか事実なんです。(多額のお金を積めず)入所施設を利用できずに困っている親からしたら、本当に死ぬに死にきれない。これが現実なので、その辺りを考えていただけたらなと思います。
木村義雄議員:施設によっては数百万もの寄付金を積まないと入れないっていうところもあるらしいけど、厚労省はその辺りのところはどう対処していくつもりなの?
朝川智昭(厚労省障害保健福祉部企画課長):入所施設は公的な施設ですから、入所するときにお金を積まないといけない、そういうことはあってはいけないと思っております。
障害福祉サービスへ競争原理を導入することについて
白井昭光(社会福祉法人茶の花福祉会):私たちの法人では、他の施設を追い出された方々が非常に多いんです。でも他の施設で見放されたような(重い障害の)方々を受け入れたりするのは、横一直線の制度では難しい。一律同じ制度の中で頑張ろうという時代でいると結果的に障がい者の受け入れ先が無くなってしまうんではないかと。支援技術や支援議論を向上させるためにも、(法人間の)競争で支援の質がどんどん上がるような仕組みができたらいいなと考えています。
朝川智昭(厚労省障害保健福祉部企画課長):特に重い方を受け入れていただいた場合には、報酬上の加算の仕組みを設けておりますし、これからも重度の方をしっかりと受け止めていただける機能評価に取り組んでいきたいと思います。
大川豊の現場視察で更に明らかとなった問題点
第1回勉強会以後、大川興業の大川豊氏により勉強会出席法人等への現場訪問が実施された。現場訪問により更に明らかとなった福祉現場の生の問題をレポートする。
【社会福祉法人 茶の花福祉会】の一例
<問題となった知的障がい者のケース>
自分の弟を2Fから投げて怪我をさせる。女性へのセクハラ行為、包丁を持ってコンビニに入り逮捕。鑑別所、拘留期間が切れるが受け入れ先が見つからない状況。接見に行く。県の事業団だけでなく、経歴によりリスクが高すぎると言われ、受け入れてもらえない。
<法人が行った対応策>
鑑別所へ接見後、受け入れ枠がないため措置入所で一時的な受け入れを行った。しかし、他法人で受け入れ先が見つからないため、数年後には茶の花福祉会の施設入所支援サービスへ変更。
〔2019年7月現在〕
☑最重度の触法※1の人も受け入れる。スタッフの努力で日常生活が送れる位に回復すると、症状は軽くなったと判断され、施設の収入は減少。勿論、スタッフに対してプラスαになる支給があるわけではない。 スタッフ、施設の人たちのモチベーションは下がり、他の施設でも閉じ込めておく方向に行ってしまう。
※1 刑事責任を問えない人が法律にふれることを、犯罪と区別していう。
☑自治体、鑑別所や警察署から入所要請が来るが、すでに満杯状態であるため、措置入所の為、回復途中の人たちをグループホームに移さざるを得ない。
☑待機児童ならぬ待機知的障がい者が山のようにいて、入所施設、グループホームが足りないのが原状。
資料
議事録[PDF]
> 知的障害者の抱える諸問題と明日へ繋がる政策を考える会 議事録
当日配布資料[PDF]
> 【レジュメ】平成30年7月11日 第1回 知的障がい者問題勉強会レジュメ
> 【資料①】知的障害者定義(Wiki)
> 【資料②】知的障害者定義(WHO ICD-10)
> 【資料③】保護司に対する配布資料
> 【資料④】施設内事故での責任問題(近森)
> 【式次第】勉強会式次第
勉強会招集通知[PDF]
> 招集通知1枚目
> 招集通知2枚目
> 招集通知3枚目
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